東京地方裁判所 平成10年(特わ)2585号
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官矢吹雄太郎、弁護人西山彬、同江村正之各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金二〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、東京都新宿区西新宿四丁目四番一号メゾン前田四〇一に居住し、同区歌舞伎町二丁目九番三号ほか一か所において、いわゆるポーカーゲーム店二店を経営をしていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、右各店の経営者が自己ではなく各店の従業員であるかのように装い、かつ、売上金を借名預金口座に入金するなどの方法によりその所得を秘匿した上、
第一 平成六年分の実際総所得金額が四二九九万四九七八円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、右所得税の納期限である平成七年三月一五日までに、同区北新宿一丁目一九番三号所轄新宿税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成六年分における正規の所得税額一五三九万五〇〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ
第二 平成七年分の実際総所得金額が七四〇〇万五六一三円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、右所得税の納期限である平成八年三月一五日までに、前記新宿税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成七年分における正規の所得税額三〇七〇万四五〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ
第三 平成八年分の実際総所得金額が八二八九万六二七七円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、右所得税の納期限である平成九年三月一七日までに、前記所轄新宿税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって、不正の行為により、平成八年分における正規の所得税額三五一四万七〇〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
* 括弧内の甲乙の番号は検察官請求証拠番号
判示全事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官調書三通(乙一ないし三)
一 鳥越浩二の検察官調書謄本二通(甲二〇、二一)
一 検察事務官作成の捜査報告書七通(甲一、二、四、一〇、一一、一六、一八)
一 大蔵事務官作成の調査書七通(甲三、五、六、九、一二、一三、一五)
判示第二及び第三の各事実について
一 大蔵事務官作成の調査書(甲八)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の調査書(甲七)
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の調査書(甲一四)
(法令の適用)
一 該当法条
いずれも平成一〇年法律第二四号による改正前の所得税法二三八条一項、情状により、所得税法二三八条二項
二 刑種の選択
各罪につき、懲役刑及び罰金刑を併科
三 併合罪の処理
懲役刑 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第三の罪の刑に法定の加重)
罰金刑 刑法四五条前段、四八条二項
四 労役場留置
刑法一八条
五 刑の執行猶予
刑法二五条一項
(量刑の理由)
本件は、三年度にわたって全く納税申告をせず、その間の所得税を一〇〇パーセントほ脱した事案であり、そのほ脱税額は、合計八一二四万円余の多額にのぼり、動機は、将来のコンビニ店等の経営資金の確保などというものであって、酌量の余地はなく、その方法手段も、あらかじめ所得隠しのための借名預金口座を設けたり、ポーカーゲーム店の経営者名を従業員名に仮装するなど、巧妙、計画的であって、犯情悪質といわざるを得ず、被告人の刑事責任は軽くない。
しかし、被告人は、その後修正申告の上本件に関する本税、重加算税、延滞税を完納していること、被告人は、現在では反省の態度を示し、当公判廷において、今後再び罪を犯さない旨誓っていることなど被告人のために酌むべき事情も認められる。
以上の諸事情を総合考慮し、主文のとおり量刑した。
(求刑 懲役一年・罰金二五〇〇万円)
(裁判官 池田耕平)
別紙1
修正損益計算書
自 平成6年1月1日
至 平成6年12月31日
谷山喜昭
<省略>
修正損益計算書
自 平成7年1月1日
至 平成7年12月31日
谷山喜昭
<省略>
修正損益計算書
自 平成8年1月1日
至 平成8年12月31日
谷山喜昭
<省略>
別紙2
ほ脱税額計算書
平成6年分
谷山喜昭
<省略>
平成7年分
谷山喜昭
<省略>
平成8年分
谷山喜昭
<省略>